【米国株】全固体電池銘柄「クアンタムスケープ(QS)」が面白そう
どうもメーカー営業マン(@makereigyouman)です。
今回は全固体電池銘柄の一つである「クアンタムスケープ(QS)」について少し紐解いていきたいと思います。
全固体電池は電気自動車普及の切り札として期待されています。
当記事では全固体電池を簡単に解説し、全固体電池を製造するクアンタムスケープについて分かりやすく整理していきます。
2021年注目銘柄であり、非常に投資妙味が湧く企業となっています。
目次
全固体電池とは?
『全固体電池』とはその名の通り、全てが”固体”で構成されている電池のことです。
通常の電池は電解液という液体が使われています。この電解液というのは電極間(正極と負極)でイオンの伝導(要は電気)を担う役割を果たす液体のことです。
下記図をご欄ください。図を見たほうがイメージが掴みやすいと思います。
画像出所:ロータスタウン
現在の電気自動車のほとんどで蓄電池として使われているリチウムイオン二次電池の多くに「有機溶媒(非水)系電解液」と呼ばれる電解液が使われています。
この有機溶媒系電解液にもさまざま種類はあるのですが、有機溶媒の可燃性が高いことから「電池の発火リスク」が懸念されています。
スマートフォンが突然発火したりというニュースを見たことがありますよね。
スマートフォンにもリチウムイオン二次電池が使われており、原因の多くが電池から発火です。
全固体電池のメリット
ここで全固体電池のメリットを列記してみます。
- 発火のリスクが低い(安全性が高い)
- 急速充電が可能
- エネルギー密度が高い
- 作動温度範囲が高い
- 形状の設計自由度が上がる
- 液漏れがない
- 劣化しにくい
などなど、現行のリチウムイオン電池に勝るメリットが多く、次世代電池として期待されています。
特に安全性の面では期待が大きく、発火リスクのある電解液を使うリチウムイオン電池と比較して電解質が固体の全固体電池では発火などの危険性が小さくなり、リチウムイオン電池よりも安全に使用することができます。
自動車は人を乗せるものですから、安全性の面ではかなり厳しい基準で製作されます。車が燃えてしまっては安全も糞もありませんから、全固体電池にはかなりの期待が寄せられているものと推測します。
もちろんこの他にも急速充電可能な点など期待されている部分は多く存在します。
<デメリット>
一方で、もちろんデメリットも存在します。
- 電極と電解質の界面抵抗が大きい(イオン伝導率が低い)
- 量産体制が整っていない
電解質が固体だと内部抵抗が高くなり、イオンが伝わりにくくなります。
そのため、電池として出力を上げにくくなってしまうというデメリットが存在します。
ただし、材料開発は物凄い勢いで進んでおり、近い将来には電解液と同等の固体電解質が発見され、この課題は克服できるかもしれません。
また現状では量産体制が構築されていないという点も全固体電池のデメリットの一つです。
EV向け全固体電池を開発するクアンタムスケープ(QS)
前置きが長くなりましたが、前述したようにEV向けに期待されている全固体電池を開発しているのが米クアンタムスケープ(ティッカー:QS)です。
まずは基本情報を見てみましょう。
基本情報
社名 | クアンタムスケープ (英文社名:QuantumScape Corp) |
概要 | クアンタムスケープは米国の電気自動車向けバッテリーメーカー。主に電気自動車(EV)向け全固体電池の開発・製造に従事する。同社の全固体電池(ソリッドステートリチウムイオン電池)は従来のリチウムイオン電池に比べ充電時間が短く、耐久性が長いことを特色とする。ドイツ自動車メーカーのフォルクスワーゲンと提携する。本社所在地はカリフォルニア州サンホゼ。 |
本社所在地 | 1730 Technology Drive San Jose, CA 95110 USA |
設立年月日 | 2010年 |
従業員数 | 286人(2021年4月時点) |
業種 | 工業 |
上場市場 | NYSE(ティッカー:QS) |
上場年月日 | 2020年11月27日 |
時価総額 | $17.4B(約1兆1,278億円) 2021年4月12日時点 |
参照元:Yahoo! Finance
クアンタムスケープは米国スタンフォード大学からのスタートアップ企業で2010年に設立されました。
電気自動車(EV)向けバッテリーメーカーであり、全固体電池の開発・製造を行っています。
上場したのは2020年11月末、特別買収目的会社(SPAC)を通じて上場しています。
上場前には独自動車メーカー、フォルクスワーゲンから3億8,000万ドル(約400億円)調達しています。また同社の出資元にはビル・ゲイツの財団が名を連ねており、かなりの期待が寄せられているようです。
共同設立者の一人、スタンフォード大学フリッツ・プリンツ教授。
教授に加え、博士課程のティム・ホルムと起業家のジャグティープ・シンによって設立された。
起業家のジャグティープ・シンは資金調達力に優れており、著名投資家から2,300万ドル(約25億円)調達することに成功しています。
その資金から優れた研究者をヘッドハントし、バッテリー関連の特許を200以上取得することに成功したと言われています。
本社建屋のストリートビュー 出所:Google
クアンタムスケープの全固体電池
↓写真がまさにクアンタムスケープの全固体電池です。
出所:QuantumScape
特徴
クアンタムスケープが開発する全固体電池の特徴は以下の通り。
- 室温での重量エネルギー密度は300超~400超Wh/kg、体積エネルギー密度は1000Wh/L前後で、EVの航続距離は既存のリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)の1.8倍と長い
- 負極には金属Liを使うが、過剰なLiはない「Zero excess」または「負極レス」のLiイオン系2次電池
- セパレーター(固体電解質)はセラミックであり、不燃性で耐熱性も高く、たとえ熱でLi金属が溶融しても化学的に安定
- 放電後、15分で充電率80%にまで充電できる
- 充放電サイクルは800回以上で、放電容量は初期値の80%以上を維持
- 摂氏マイナス30度でも動作
- 試験的な製造は2023年以降、本格的な量産は2025年以降
引用元:日経xTECH
専門的な内容は分かるようで分かりませんが、ポイントをまとめると以下のような感じです。
- 通常のリチウム電池と比較して航続距離が1.8倍長い
- 発火リスクを最小限に抑えることが可能。
- 15分で80%まで充電可能。
- 充放電サイクル800回以上で初期値の80%以上を維持することができる。
- マイナス30度という厳しい環境下でも動作する。
これが本当であればもの凄い性能です。
一般的にリチウムイオン電池は500回の充放電サイクルを繰り返した時点で静電容量は60%まで減少すると言われています。
また、温度がマイナス20℃まで下がると設計性能の50%まで低下、マイナス40℃を超えると本来の容量の12%しか維持できません。
クアンタムスケープが開発する全固体電池はそれを超える性能だと言うのです。
更に、クアンタムスケープの全固体電池は金属リチウムをアノードとすることで省スペース化を実現しています。
従来のリチウムイオン電池比較して遥かに小さな体積でエネルギーを保存できるため、エネルギー密度が劇的に増加しています。
クアンタムスケープの全固体電池は業界で一歩、二歩先に行っていると言っても過言ではないでしょう。
株価推移
クアンタムスケープ(QS) チャート 出所:finviz
11月27日にSPAC上場を果たしています。
上場後の株価は面白いように上昇し、一時は110ドルを超える株価を付けたようですが今はその半値以下で推移しています。
EVブームで株価は買われましたが、ブームが去った今は下火となっている状態です。
業績
2020年12月期 | 2020年5月期 | |
売上高 | – | – |
営業利益 | – | – |
当期利益 | -1,099,914千 | -2.5千 |
EPS | -4.36 | – |
自己資本比率 | 97.63% | 26.01% |
出所:Yahoo!Finance
はい、見て分かる通り業績も糞もありません。
まだ電池は開発段階ですから販売もなにもしてないんですね。
販売は2020年代後半を予定しているようですが、まだまだ先は長いでしょう。
クアンタムスケープは完全にスタートアップ企業です。業績で選ぶ銘柄ではありません。
じゃあなんで株は買われるかというと完全に期待・思惑から買われています。
プレスリリースやレーティングで株価は乱高下します。
実際にもアナリストが目標株価70ドルと発表したことで株価は上昇しています。
EV関連は今後期待できると思うが・・・
今後、ガソリン車規制はますます進行していくと思います。
実際にも海外各国がガソリン・ディーゼル車の販売規制を発表しています。
- イギリス:2030年販売禁止
- ドイツ :2030年販売禁止
- フランス:2040年販売禁止
- 中国 :2035年ハイブリッド車のみ許可
- カナダ :2035年販売禁止
- アメリカ:2035年販売禁止
とあるように、ガソリン車はEVに続々と入れ替わっていくものと予想します。
市場はこれらを既に織り込んでおり、EV関連銘柄は期待・思惑から買われていますから買われ過ぎという風に見ても間違いではないでしょう。
また、各社こぞってEV関連の開発・製造を行っています。力の無い企業は淘汰されていく運命です。
今後伸びる企業、残る企業はどんなものなのか。
EV関連銘柄に投資する際はその見極めが非常に重要になってくるのではないでしょうか。
結局のところ何が言いたいのかと言うと、クアンタムスケープは非常に投資妙味はあります。ただ、現時点では少し買われすぎなのではないかと思っています。
※投資は自己責任でお願いします。
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